朝8時、お母さんと世奈兄に見送られ家を出た。
世奈兄は10時に家を出るらしい。
この時間は嫌い。昨日も今も周りの視線に戸惑う。
有紫の象徴とも言えるこの制服は、自分自身を魅せる為にあると昨日学館長が言っていた。
つまり、それは自慢と言ってもいい。この制服を着れない他校生にとってあたし達は“図に乗っている遠い世界の人達”。
そう考えると家から通うよりも寮を利用した方が良いのかもしれない。
「ねぇねぇ、その制服ってお金持ちしか通えない有紫でしょ? お金、たんまり持ってるなら俺等にも分けてよ」
いきなり知らない男にいきなり肩を抱かれて目を見開く。
「ていうか君可愛いね」
「あ・・・の、」
助けて。誰か助けて。
必死の思いで周りを見渡してみても助けてくれるような人はいない。
「放、して下さい・・・」
「震えちゃって可愛いね」
「お金なんて持ってません・・・」
「またまたぁ。お金持ってなかったら有紫になんか通えないでしょ?」
そんなの知らない。あたしはお金なんて持ってない。
助けて、お兄ちゃんっ・・・!
