講堂を出てからおよそ10分、1年C組という標札が見えてきた。
不審者の如く、覗くように教室の中を見渡すと、何人かの生徒達は既にわいわいと話している。
「何してるの?」
「わ、すみません」
「中に入らないの?」
うわぁ可愛い子・・・。見た目は典型的なお嬢様って感じ。
「あ、えっと、入ります」
「ふふ、同い年なのに何で敬語なの? あたしは九条咲〈くじょうさき〉。よろしくね」
「宇佐美世利です。よろしくね」
ふわふわなキャラメル色の髪と砂糖みたいに白い肌。瞳の上にある睫毛は長くて綺麗に揃っている。そしてピンク色のふっくらとした唇。
「咲って呼んでね。あたしも世利って呼んでも良い?」
「う、うん」
「世利って外部生?」
「あ、うん」
「殆どは中等部からの内部生だから知ってる顔が多いけど、世利は見た事ないなぁって思って」
なんか咲って見た目はお嬢様なのに話し方は気さくかも。
仲良くなれそうな人がいて良かった。
