「お前、名前は?」

「宇佐美世利といいます・・・」

「兎?」

「宇佐美! よく間違われるけど兎じゃありません!」

「・・・俺は梧斗〈あおと〉。それともう1人、」




「梧斗、悪い遅くなった・・・!」


 息を切らして現れたのは、浅梔子色の縁の眼鏡を掛けていて、梧斗さんより少し身長の高い有紫の制服を着た男の人。片手にはスマートフォンを持っている。


「宇佐美、」

「え、あ、はい・・・!」

「これからこいつに案内してもらえ」

「あの、」

「悪いようにはしない。こいつは未央〈みお〉っていうから。じゃあ未央、頼むな」

「はいはい」


 未央と呼ばれた男の人は、スマートフォンを片手にやれやれと呆れたように溜め息をついた。
 そんな未央さんの行動を見て、梧斗さんは「それお前の役目。よろしくな」と未央さんに向けてニヒルに笑った。


―――・・・


「・・・えっと、名前聞いても良い?」

「宇佐美世利といいます」

「世利ちゃんね。俺は華柳〈かりゅう〉未央。見ての通り有紫の2年生。じゃあ世利ちゃん、行こうか」

「さっきから気になっていたんですけど、どこに行くんですか?」

「内緒」


 はあ、内緒ですか。