「…もうすぐで、12時だな」 …本当だ。 今の時間は、11時55分。 1時間なんて、あっという間。 でもあたしは、この1時間を一生忘れない。 もう、両方のカクテルは無い。 「瑠璃」 低い声で、名前を呼ばれた。 少し俯いていた顔を上げると、彼は優しく、困ったように微笑んでいた。 「……愛してるよ」 彼はその長い手を伸ばして、あたしの髪を撫でた。 どうして、こんなこと言うの? 本当に、望んでしまう。 このまま、時が止まってしまえばいいのに、と。