「んだよ、てめぇ」
怒る男を一瞥し、刹那はあたしの目を覆った。
そして、ドカッという音がして、それと同時にあたしは部屋から出た。
帰り道、何も話さないのが気まずい。
だって、ずっと避けてたんだもん。
会わなかった。
だから、今更どうしたらいいかなんてわかんない。
家に着き、繋いでいた手を離す。
「ありがとう、刹那
バイバイ」
そう言って、玄関を開けようとする。
ほんとはね、嬉しかった。
嘘でも、
"俺の"
って言ってくれて。
あんなに、あたしに無関心だったのに、そう言って助けてくれて。
泣きそうになりながら、ドアノブに手を掛けた瞬間。
「日和、」
呼ばれたとほぼ同時に、唇が熱で覆われた。
ビックリして、目を見開く。
だって、まともにキスしたこと無かったから。
ジッと刹那を見つめる。
刹那は、苦しそうに微笑んで、そして
あたしの瞼に触れた。
「目ぇ、つぶれ」
言われるがままに目をつぶれば、再び熱が降り注いだ。