『ま、間違いない! このロウソクは僕自身だ!』
 他の家族のロウソクが普通に燃えている中、僕のロウソクだけが倒れかけていた。
『よ……っと』
 僕は細心の注意を払いながらロウソクを立て直した。
 ロウソクは元の位置に戻り、僕は何か圧し掛かっていたものが薄れていくような錯覚に陥った。
 なぜか僕には、これで助かるのだという確信があった。そして辺りを見回す余裕が生まれた余裕が生まれると、辺りには僕以外の人がいる事に気がついた。
『あ、あれは……裏にすんでいるお爺さんだ。確かお婆さんと二人暮らしだった筈だ』
 さすがに高齢の為か、二人のものであろうロウソクは短くなっており、そのうちの一本の炎は消えかかっていた。
 お爺さんは黙ってそのロウソクを見つめていた。
『可愛そうに、あのお爺さん……死んじゃううんだ』
 僕がそう思った時、意識が急速に回復していくのがわかった。
 ……。
 これが僕の2回目のあの世体験。
 ……ただね、この話には続きがあって、裏のお爺さんは死んでなかった。死んでしまったのはお婆さんの方だったんだ。
 かわいそうだったよ。裏のお爺さんとお婆さんは凄く仲が良くて、僕にも家族にもとても親切にしてくれてたからね。
 しばらくは、お爺さんの娘さんが頻繁にお孫さんを連れて遊びに来たりして、気弱になったお爺さんを励ましていたようだったよ。
そして、僕があの世を訪れた三度目。