……。
 そして僕は肺炎が治り、喘息も成長に伴って次第に薄れていき、やがてこの頃の記憶もすっかりと忘れていた時、再びあの場所へと戻る事件が起きた。
 交通事故にあったのだ。
 僕が小学校の4年生の時。夜に母親と自転車で買い物に出た日の事だった。信号のない横断歩道を渡ろうとした所で、僕の記憶は一気に吹き飛んだ。
 ……。
 僕は懐かしい場所に寝そべっていた。
『あ、ここは……。子供の頃に何度も来た場所だ』
 すっかり物心のついた年齢だ。今度は字も読める。僕は辺りの異常な光景に今度は畏怖しつつ、辺りのロウソクに刻まれた文字を見て愕然とした。
 ……そこに刻まれた文字は全て見覚えがあったからだ。
『こ、これは友達の吉ちゃん! こっちは安ベエの、こっちは玲ちゃんのだ!』
 辺りのロウソクには全て知人の名前が刻まれていたのだ。それは友達や先生、はたまたお隣さんや、テレビで有名な芸能人のものまであった。
『ま、まさか……』
 僕は何かを知っているかのように歩を進めた。どんどんと進んでいくと、きっちりと五本ならんだロウソクが現れた。
 他の辺りのロウソクは親戚のおじさんや、従兄弟の女の子達の名前が刻まれている。その中央に並んだロウソクには……。
『……石田徹、石田淳』
 家族の名前、そして僕と徹の名前も刻まれていた。