……。
 僕は生まれながらにして病弱でね、今までに何度か生死の境を彷徨った事があるんだ。キミにも一度くらい死にそうになった経験とかないかい? 僕は今までに3回死にそうになった経験がある。でもまあ、死にそう……というのは大袈裟なのかな。
 ……一度目は産まれて2歳の時。この時はまだ物心もつく前だし喘息から肺炎になって入院したと聞かされたけど全く覚えてはいない。
 ……二度目は5歳の時。また同じく肺炎になって2ヶ月も入院した。
 本当にこの時ばかりは辛かった。遊びたい盛りに入院だし、なぜ双子の徹は元気なのに自分だけ……って、徹を恨めしく思ったりもしたよ。
 ……でもね、この時に初めて僕は不思議な経験をしたんだ。
 ……。
『ここはどこ? 暗いよ。ママ、助けて』
 僕は真っ暗な闇の中にいた。辺りは薄暗くて自分の姿すらもはっきと見えない程の暗闇だ。冷たく、凍えそうに寒い空気が支配する世界……そんな中で、僕は膝を抱えて一人泣いていた。
『パパ~、ママ~。どこにいるの~。お腹すいたよ~、寒いよ~』
 僕は泣きながら歩き出した。きっと何処かに父さんと母さんがいると信じてね。
 すると、遠くにボヤッとした光が見えた気がした。
『……なんだろう? 何か光ってる』
 僕は暗闇の中、その光だけを頼りに歩き出した。
 ……どれだけ歩いただろうか? やがて僕の前に、静かに燃えるおびただしい数のロウソクが現れた。
 短いものや長いもの、太さや細さも様々で中には消えているものや倒れているものもあった。
『す、凄い数のロウソク……でも、ちっとも暖かくないや』
 子供だったからか、無数のロウソクを異常なものと思うよりも、暖かくないという事のショックの方が強かった。
『あ、なんか字が書いてある』
 この時の僕はまだ漢字が読めなくて、それぞれのロウソクに何が書かれているのかはわからなかった。
 ……ただ一つ感じた事は、このロウソクには触ってはいけないのだと言うことだった。