第65話 『寿命蝋』 語り手 石田淳
「ふう。徹君もずいぶんと昔と変わったわね。やっぱり十年の歳月は人を大きく成長させるのね。いや~立派立派」
赤羽先生は拍手をしながら、十年ぶりの怪談の再開を楽しんでいるようだ。
私も昔に戻ったようで興奮しているのがわかった。次にどんな話を聞く事が出来るのかという好奇心、そして怖いものに対する恐怖心。この二つが入り混じった複雑な感覚は何とも言えない快感を生み出してくれる。
「じゃあ、次は僕の取っておきの話をしようかな」
淳さんがいつになく明るく見えるのは気のせいだろうか? 彼は大人しく、どちらかといえば陰気な感じのする人だが、今回ばかりは話をしたくてウズウズとしている感じだ。彼が自ら『とっておき』というくらいだ、心して聞くとしよう。
「じゃあ、淳さんよろしくお願いします」
「うん。みんな『寿命蝋』って知ってるかな?」
「寿命蝋?」
斎条さんが頭を捻ってハテナ顔を作る。
「もしかして、人間の寿命を表すっていう話?」
能勢さんがポツリと一言言い、淳さんがニヤリと笑った。
「あ~あ~、あれかあ。何か昔話とかでたまに耳にするアレね」
次いで大ちゃんさんも話しに乗ってきたが、私には何の話なのかさっぱりだ。そんなにその『寿命蝋』というのは有名なのか?
「そう。人間の寿命は産まれた時に既に決まっていて、あの世で各自一本すつのロウソクが灯っている。そのロウソクが消えた時……人間は死ぬって言われている」
淳さんの話に神秘的な感覚を受けながらも、私は次第にその話に引き込まれていった。
「これから話すのは、そんな寿命蝋に関する話……僕は実際に見てきたよ。あの世まで行ってね……」
「ふう。徹君もずいぶんと昔と変わったわね。やっぱり十年の歳月は人を大きく成長させるのね。いや~立派立派」
赤羽先生は拍手をしながら、十年ぶりの怪談の再開を楽しんでいるようだ。
私も昔に戻ったようで興奮しているのがわかった。次にどんな話を聞く事が出来るのかという好奇心、そして怖いものに対する恐怖心。この二つが入り混じった複雑な感覚は何とも言えない快感を生み出してくれる。
「じゃあ、次は僕の取っておきの話をしようかな」
淳さんがいつになく明るく見えるのは気のせいだろうか? 彼は大人しく、どちらかといえば陰気な感じのする人だが、今回ばかりは話をしたくてウズウズとしている感じだ。彼が自ら『とっておき』というくらいだ、心して聞くとしよう。
「じゃあ、淳さんよろしくお願いします」
「うん。みんな『寿命蝋』って知ってるかな?」
「寿命蝋?」
斎条さんが頭を捻ってハテナ顔を作る。
「もしかして、人間の寿命を表すっていう話?」
能勢さんがポツリと一言言い、淳さんがニヤリと笑った。
「あ~あ~、あれかあ。何か昔話とかでたまに耳にするアレね」
次いで大ちゃんさんも話しに乗ってきたが、私には何の話なのかさっぱりだ。そんなにその『寿命蝋』というのは有名なのか?
「そう。人間の寿命は産まれた時に既に決まっていて、あの世で各自一本すつのロウソクが灯っている。そのロウソクが消えた時……人間は死ぬって言われている」
淳さんの話に神秘的な感覚を受けながらも、私は次第にその話に引き込まれていった。
「これから話すのは、そんな寿命蝋に関する話……僕は実際に見てきたよ。あの世まで行ってね……」

