学園怪談2 ~10年後の再会~

「も、もしも~し」
 怖くなった私は大声で通話口に呼びかけるが返事は帰ってこない。
「もう! 繋がってないの? 誰も出ないなら切るからね!」
 私はもうこの時には、頭の中は大パニックだったに違いない。とにかくこの場所にいることが怖くてたまらなかったのだ。
 雨の降りしきる中、電話ボックスという密室に閉じ込められ、得たいの知れない恐怖に怯えるしかなかった。
 ……そして。
 リリリリリリ。
「きゃっ!」
 座り込み、途方に暮れていた私の目の前で、緑色の公衆電話から呼び出し音が鳴った。
「え、うそ? 公衆電話に呼び出し音なんてついてるの?」
 私は怖い気持ちを堪えて受話器を握った。誰かが、この異常事態に気が付いた誰かが、私を助けてくれるのかもしれない。
「は、はい、もしもし」
 受話器を耳に当てた私の耳に、息を切らせた男の声が聞こえて来た。
『今すぐ座って! それから、顔を上げちゃダメだ! いいかい、絶対に顔を見ちゃダメだよ!』
 受話器から聞こえて来た声は、意外にも普通の男の人の声だった。
「あ、あの~、アナタはいったい? 何を言ってるんですか?」
 私は素直に座りなおしつつ、声の主に尋ねる。
『いいかい、キミは今呪われてるんだ。キミの行った行為は魔物を召還する魔術の一種で、召還された奴がここへやって来る。絶対にここから出てはいけない。それから奴と顔を会わせてもいけない! 顔をあわせたら最後、魂を抜き取られるぞ』
 突拍子もない話だった。でも何故か、その時の私には説得力が感じられた。初めて聞く男の声なのに、なぜか、妙に懐かしいような、優しさに包まれるかのような独特な感じを受けたのだ。
 ……ふと、気が付くと、ドアのガラス越に目の前に誰かが立っているのが分かった。