「井上昂明。彼はこの新座学園の初代卒業生……『絵斬り般若』の絵を書いた人物だよ。ほら徹が10年前に小松っちゃんの事件の話をしたじゃない? その時に、絵斬り般若を書いた卒業生がこの校庭に生き埋めにされて殺されたって話をしたでしょ、それから新座学園に災いが起こるようになったっていう話。僕はその後、学園の歴史を全て調べなおして行き着いたんだ……井上昂明の名前にね」
 ……衝撃の事実だった。10年前の怪談で出た話が、時を経て今ここに甦ったのだ。
「あ、待って下さい。もう一枚、紫乃さんの友達の手紙も入ってますよ」
 私はどうしていいのかわからない中、もう一つの手紙に助けを求めた。

『   十条 美也子
 
 年月が経つのは早いもんだね~。この手紙を私はちゃんと覚えていられるかな? この間入学したばかりだと思ってたらもう卒業だもん。信じられないよ。
 毎回のように私たち二人は荷物検査で先生に怒られたね。学校に関係ないものばかり毎日持ち込んでたし、当然といえば当然か、あはは。
 クラブ活動で私は弓道を学んだ。高校に進学して、もっと本格的にやってみたい。競技用の本格的な弓を持った時に感じたんだよね~。これで的の中心を射抜いてみたいって。しっかり練習すれば将来はオリンピックに出てたりして……なーんてね。もっと現実を見ろって感じだよね。                               』