『小野田紫乃。確かにお前の命は貰い受ける……井上昂明』

 突然、教室の明かりが何度か明滅して消えた。窓を開けてもいないのに、外から入り込んできた風がカーテンをバタつかせる。
「きゃああ! 何が起きたの?」
 斎条さんの悲鳴が教室に響く。
「だ、大丈夫よ! 落ち着いて」
 赤羽先生が落ち着かせようと試みるが、その声には何の説得力もない。
 ガタガタと教室の机も揺れ、立てかけてあったモップなどが倒れた。
「いったいどうなってんだ!」
 能勢さんが倒れそうになる教卓を抑えて叫ぶ。
 ……ガタタ。ガタ。
 ……やがて、数分続いたポルターガイストが治まると、教室を先ほどの出来事が嘘だったかのような静寂が支配した。
 そして、蒼白な顔色の紫乃さんの手元には例の手紙がまだ握られていた。
 ……血のように赤いよれた字で書きなぐられた驚愕の内容。
「な、何これ! 嘘! 私こんなの知らない! いつのまにこんなメッセージが?」
 紫乃さんの動揺ぶりから、彼女はこの文字の事を本当に知らないことが窺えた。
「なんだろう? 井上昂明?」
 大ちゃんさんがメッセージの下に書かれた名前を読み上げた時、淳さんの顔色がみるみる変わっていく。
「な、なんだって。井上昂明だって……」
「知ってるんですか淳さん?」
 私の問いかけに、冷や汗を流しながら淳さんは言った。