……? 
 私は一瞬の紫乃さんの間に違和感を覚えた。
『なんだろう今の間は? それに仲の良い子だったって……』
 私の疑問を他所に、一枚目の手紙は開かれた。

『   小野田 紫乃  
 
 マジで私の十年後の夢を書いちゃうけど、ちゃんと25歳の私はこれを見るのかな? え~っとね、十年後の私はきっとイラストレーターかな。だって絵を書くの好きだし、私はOLみたいな普通の仕事には向いてないと思うんだよね……たぶん。
 十年後、自分がどうなってるかなんて想像もできないけど、私は仕事もしたいし、いい年齢になったら結婚もしたいと思ってる。相手は誰なんだろう? まだ出会ってない?  意外にもう身近にいたりする? わかんないよね、そんなこと。
 ……内緒にしていた事をせっかくだから一つ告白しておこうかな。実はこの間ね、徹が二階の廊下で誰かに告白されているのを偶然見かけちゃったんだ。実はちょっとドキドキしながら様子を窺っていたんだけど、徹は『好きな人がいるから』って断ってた。見て見ぬふりをしたけど凄く気になった。徹の好きな人って誰なのかな……。        』

 そんな内容で一枚目の紫乃さんの手紙は終わっていた。
「へ~、俺のセピア色の想い出をお前は立ち聞きしていた訳か」
 徹さんは紫乃さんを横目でジロリと見る。
「もう時効だよ~だ。でもなんで私が徹の告白の返事に、いちいちドキドキしたりなんかしなくちゃいけないのよ。それにあの時、隠れて見てたから告白した相手が誰だったのかわからなかったし。なんかムカツクな~」
 そんなやりとりをする紫乃さんの手紙の裏に、何か文字が浮かび上がっていた。
「あ、なんか文字が……きゃあ!」
 文字を覗き込んだ斎条さんが紙を見たまま悲鳴を上げた。
「ど、どうしたの?」
 能勢さんが紙を裏返し、みんなに見えるように広げた。