学園怪談2 ~10年後の再会~

第59話 『選択ゾンビ』 語り手 山﨑大介

 赤羽先生の妊娠の事実には驚かされたが、次に登場するのは大ちゃんさんだ。
 怖い話といえば淳さんの専売特許のようなイメージを私はもっているが、大ちゃんさんの話も油断ならないのは10年前から分かっていることだ。
「さてと。それじゃあ俺の話を始めようか」
 大ちゃんさんは席を立つと、赤羽先生が椅子に腰掛けるのを見届けてから話し始めた。
「富士の樹海……青木ヶ原樹海ってあるじゃない? そう、あの有名な自殺の名所だね。足を踏み入れたらたら最後、脱出不可能になるって話だけど……本当にそんなことがあると思うかい?」
 大ちゃんさんの質問に私は首を傾げた。
「確か樹木が生い茂っているせいで太陽や星の向きが分からなくなったり、コンパスなんかも磁場のせいか何かで正しい方角を指さないんですよね? そんなとこに迷い込んだりしたらやっぱり助からないんじゃないですか?」
 私の答えに大ちゃんさんは首を振った。
「いやいや、死にたい奴は何の準備もなしに入り込むし逃げようともしない。俺が言ってるのはね、ただの肝試し感覚で入ったりした奴らなんかも多数死んでいるって事だよ」
 そう言われると不思議だ。確かに青木ヶ原樹海では特集番組なんかで見る度に死ぬ気があったとは思えない死体が見つかっている。
「実はね、俺は以前そこに行って来たんだ。そしてそこで恐ろしい体験をしてきたよ……」