学園怪談２ ～１０年後の再会～

　……１ヵ月後。
　スミレの母親が脳梗塞で亡くなった。
「お母さんが。お母さんがああ！」
　病院に駆けつけると、スミレは私に大きなお腹を押し付けて鳴きついてきた。
　ここの所、時子さんのおかげか、辛いことなどないかのように明るくしていたスミレが大粒の涙を流している。
「スミレ。大丈夫。大丈夫だよ」
　私も泣いていた。
　スミレのお母さんはスミレを女で一つで立派に育て上げていた。お父さんはスミレが産まれる前に離婚したため、スミレにとっては母は唯一の肉親であり、最愛の家族だったのだ。
「もうダメ。私一人ぼっちだよ」
　泣き続けるスミレの背中を私は黙ってさすり続けた。
　……不幸とは重なるものである。
　その日、病院で待つスミレのもとへ駆けつけようとした、スミレの旦那が交通事故で死んだのだ。
　病院の遺体安置所で、スミレは表情を失くして立ち尽くしていた。
　……私はいたたまれなくなり、黙ってスミレを残して自宅へと帰るしかなかった。
　……次の日、心配になってスミレの自宅を訪ねた私は信じられない光景を目にした。
「いらっしゃい～」
　そこにはスミレの笑顔があった。
「あ、あんた……」
　私は彼女に一体何が起こったのか分からなかった。
　とにかく目の前にはこぼれんばかりの笑顔のスミレがいた。とても昨日の死人のような彼女と同一人物とは思えない。
「私ね、時子さんにお願いしたんだ。全ての悲しみの時間を飛ばして下さいって」
　……そうか、それでスミレは不自然に明るかったのか。