学園怪談2 ~10年後の再会~

「ごめんね加奈子。でも、もう私辛いよ……ううう、ヒクッ、ヒクッ。こんなに、こんなに子供を授かるって辛い事なの?」
 スミレは目に涙をいっぱいに溜めながら呟いた。
「頑張ってスミレ。苦労をすればしただけ、立派な子供が産まれてくるんだから」
 私に妊娠の経験はなかったが、とにかくその時はスミレを励ます為に口から何でも言葉が出てきた。
「うん……」
 ……そして一週間後。私の携帯にスミレから連絡があった。
「加奈子! 私ね、凄い事ができるようになったの!」
 先日までの彼女はどこへやら、全くの他人かと思うほどの豹変ぶりに私は耳を疑ってしまった。
「あんた、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だって! それより凄いの、とにかく今から会えない?」
 幸いにその日は日曜日だったから、私は夜にスミレと会う約束をして電話を切った。
「いったい何があったんだろう?」
 ……スミレの新居へと上がりこむと、ツワリの苦しみから解放されたのか、ニコニコ笑顔のスミレが現れた。
「ふう。で、一体どうしたっていうのよ?」
 スミレが出してくれた紅茶に一息つくと、私は本題を切り出した」
「そうそう、聞いてよ~。実はね。私『時子さん』に会ったの」
「なに『トキコさん』って?」
 初めて聞く単語が頭で理解されず、私は間抜け面でスミレに聞き返した。
 すると、スミレは信じられないという顔つきで大袈裟なリアクションをとった。
「しょうがないわね加奈子は……今時『時子』さんを知らないなんて」
 そんなにその『トキコさん』とやらは有名なのか? 
 私は謎の正体を一刻も早く知る為に、黙って話を聞く事にした。