……。
「僕はすっかり気を失ってしまって、朝に先輩に起こされるまで倒れていたんだ」
淳さんは身を微かに震わせながら話を終えた。
「それで、その少年はやっぱり……?」
私の問いかけに淳さんはゆっくりと答えてくれた。
「いや、後から僕達当時の1年生は聞かされたんだけど。その宿は始めから借りるだけの国民宿舎でね。管理人は別の家にいても、始めから宿内には僕達以外は誰も存在しなかったらしいんだ。でも、僕は見たんだ、最後に宿を出るときに……コムギを」
「ネコマタのですか?」
「い、いや、その時は普通の猫の姿だったよ。でもね、僕はそのコムギから感じた異様なまでの霊気のようなものをいまだに忘れる事が出来ないんだ。あの心臓に突き刺さるかのような殺気をね……」
……私は淳さんの見たという、雅夫君の首だけの姿を頭から追い払おうとギュッと目を閉じた。
そして、目を閉じた私の耳に、ある懐かしい人の声が聞こえたのだった……。
残り43話
「僕はすっかり気を失ってしまって、朝に先輩に起こされるまで倒れていたんだ」
淳さんは身を微かに震わせながら話を終えた。
「それで、その少年はやっぱり……?」
私の問いかけに淳さんはゆっくりと答えてくれた。
「いや、後から僕達当時の1年生は聞かされたんだけど。その宿は始めから借りるだけの国民宿舎でね。管理人は別の家にいても、始めから宿内には僕達以外は誰も存在しなかったらしいんだ。でも、僕は見たんだ、最後に宿を出るときに……コムギを」
「ネコマタのですか?」
「い、いや、その時は普通の猫の姿だったよ。でもね、僕はそのコムギから感じた異様なまでの霊気のようなものをいまだに忘れる事が出来ないんだ。あの心臓に突き刺さるかのような殺気をね……」
……私は淳さんの見たという、雅夫君の首だけの姿を頭から追い払おうとギュッと目を閉じた。
そして、目を閉じた私の耳に、ある懐かしい人の声が聞こえたのだった……。
残り43話

