……俺は夢を見た。
『……待って。私を、私を綺麗にしてよ……』
「よせ、止めろ来るなあ!」
 俺は暗闇の中を逃げ続けていた。俺を追って来るのは、昼間にマンションでぶつかったマスクの女だ。
『見て、もっと私を見てよ~』
 後ろを振り返ると、例の女が近づいてきていた。
髪を振り乱し、マスクからのぞく吹き出物からは膿が滴り落ち、俺を捕まえようと必死の形相で追いかけてくる。
「た、助けて、助けてくれえええ!」
 夢の中だからか、俺は前に進む力が弱く、ついには女に捕まってしまい、馬乗りの体勢で圧し掛かられた。
『ねえ……私を綺麗って言って!』
「うわあああああ!」
「ああ! いい~、もっと私を見てえ! 綺麗って言ってえ!」
 俺の意識は急速に回復し、俺は俺の身体の上で髪を振り乱しながら腰を振る女の首を締め上げた。
「いやだ。止めろ、お前なんか死ねえええええええ!」
 俺の指がゴリッと嫌な感覚を伝えてきた……。