……ある日。
「ありがとうございます。次に『お綺麗なあなたに会える』のを楽しみにしています。もしも何かありましたら遠慮なく私、神崎までご連絡下さい」
 この日も俺は契約を1件済ませ、客の部屋を出ると、マンションのエレベーターに乗り込んだ。
 ……ふー。これで一仕事完了。あとは数日おきに顔を出して『あら~、美しさに更に磨きがかかったんじゃないですか?』とか言っておきゃあいいだろう。
 少しうかれていたのか、俺はエレベーターを降りた1階のエントランスホールに座り込む人影に気づかなかった。
 ガツッ!
「いて!」
 ぶつかってしまい、カバンが手元からこぼれ落ち、しっかり閉じていなかった為、書類が散乱して辺りに散らばる。
「す、すいません。お怪我はありませんでしたか?」
 俺は慌てて書類を拾い集める。