学園怪談2 ~10年後の再会~

 ……。
……あ、予知に紛れて過去の記憶も流れ込んでくる。
「はあはあはあ、どうだ? そっちは?」
 一人の男の子が窓ガラスを必至で開けようとしているけれど、ドアは貝の口のように閉ざされて一向に開かない。
「ダ、ダメです。やっぱり鍵が……回りません!」
 声をかけられた女性徒は非常口の内カギを回しているけれど、そっちも開く気配はない。
「ちくしょう、このままじゃ俺たち全員、井上孔明の死霊に殺されちまう!」
 ……死霊!
 井上孔明は死んでなお、死霊としてその姿を留めているというの?
「あ、た、田伏君。あ、あれ! あれを見て! いやあああ!」
 女生徒が悲鳴交じりの声で叫んだ先には、ヨロヨロとした足取りでこちらにやってくる女生徒の姿が見えた。
「よ、吉永……」
 田伏と呼ばれた男子生徒も、その視線の先の女性とを見るが、その変わり果てた姿に顔を歪めた。
「う……あ……ぐぐ……」
 お下げ髪の吉永さんという女生徒はつま先立ちなのに膝を曲げ、首を傾げた姿勢でゆっくりと歩いてくる。その顔は血まみれで目は白目を剥いていた。皮膚の白さと血液の赤。その色のコントラストが暗い校舎内でも際立って見える。
 ……そして、何よりも目を引いたのは、腹部にポッカリと空いて向こう側が見通せる大きな風穴だ。
 一目で彼女が生きているはずがない事がわかった。死体となっても歩き続ける異常な光景に二人は凍りついたように身動きがとれない。
「嫌! 喜多川君もおかしくなっちゃうし、もう嫌あ! 私たちみんな死ぬのよ!」
……そうか、これは淳さんの言ってた百物語をやった過去の生徒たちの記憶だ。
 死霊と化した吉永はヨロヨロとした足取りで、彼らに数歩近づいたところで前のめりに倒れた。その後はピクピクと痙攣し続けた。
「うわああああ!」
 田伏の悲鳴でようやく二人が動き始める。先ほどまで開かなかった非常口のカギがなんとか回り、重い扉を引き開ける。