第95話 『深夜のヒッチハイカー』 語り手 山崎 大介
「少し話を普通の怪談に戻すとするか。なんかあまりに変な現実の世界に触れ過ぎて部屋の空気も淀んでいる気がするしな」
大ちゃんさんは次で最後の怪談となる。彼の話がもう聞けなくなるのは寂しい気がした。でも物事の全てに始まりと終わりはある。大ちゃんさんだけでなく、この後のみんなの話にも終わりが来るのだ。
「では、お願いしますね」
私は大ちゃんさんの目を見つめて呼吸を整えた。
「俺の最後の話は車についての話だ」
……。
高校を卒業した春休み。おそらくは人生で最も自由な時間のうちの一つじゃないか? 俺は2週間の休みを使って、免許取りたてのくせに車で旅行に出る事にしたんだ。別に行く先を決めていた訳じゃない。目的のない旅だったから出発してから目的地を決めたんだ。「よう大介、日本海が本当に透き通った海かどうか見に行かねえ?」
俺の助手席で、そう提案してきたのは同じ高校に通っていた岡田健一……通称オカケンだった。そう、男二人旅だったのだ。
「おお、いいじゃん。関東育ちの俺らは濁った関東の海しか知らないからな。いっちょ長旅だが行くとするか!」
あっさり目標も決まり、俺たちは地図もカーナビもなく青看板だけを頼りに北を目指した。
……しばらくは快適なドライブが続いた。慣れた道を走るうちは会話も続き、外の景色にも目を配る余裕もあった。だけど車が群馬県に突入し、山道に入り込んだ辺りで空気が一変した。
「だからよ、さっきの道は右だったんだよ。なんでそんなに方向音痴なんだよお前は!」
「その前はお前の言ってた道で間違ってただろ! 次は俺に任せるっていったじゃねえか。勝手ばっかり言ってんな!」
気の知れた男二人旅なんてするもんじゃねえな。オカケンも俺も車内での会話に飽きていた。といって普段から夜更かししてたから眠くもない。だってまだ夜の11時だからな。景色は山ばかりで飽きてしまい、温泉宿を通り過ぎてしまった後の山道だったから続く景色は本当に山ばかり。外灯も少なくて本当に退
屈だった。
……そんな時だった。
「少し話を普通の怪談に戻すとするか。なんかあまりに変な現実の世界に触れ過ぎて部屋の空気も淀んでいる気がするしな」
大ちゃんさんは次で最後の怪談となる。彼の話がもう聞けなくなるのは寂しい気がした。でも物事の全てに始まりと終わりはある。大ちゃんさんだけでなく、この後のみんなの話にも終わりが来るのだ。
「では、お願いしますね」
私は大ちゃんさんの目を見つめて呼吸を整えた。
「俺の最後の話は車についての話だ」
……。
高校を卒業した春休み。おそらくは人生で最も自由な時間のうちの一つじゃないか? 俺は2週間の休みを使って、免許取りたてのくせに車で旅行に出る事にしたんだ。別に行く先を決めていた訳じゃない。目的のない旅だったから出発してから目的地を決めたんだ。「よう大介、日本海が本当に透き通った海かどうか見に行かねえ?」
俺の助手席で、そう提案してきたのは同じ高校に通っていた岡田健一……通称オカケンだった。そう、男二人旅だったのだ。
「おお、いいじゃん。関東育ちの俺らは濁った関東の海しか知らないからな。いっちょ長旅だが行くとするか!」
あっさり目標も決まり、俺たちは地図もカーナビもなく青看板だけを頼りに北を目指した。
……しばらくは快適なドライブが続いた。慣れた道を走るうちは会話も続き、外の景色にも目を配る余裕もあった。だけど車が群馬県に突入し、山道に入り込んだ辺りで空気が一変した。
「だからよ、さっきの道は右だったんだよ。なんでそんなに方向音痴なんだよお前は!」
「その前はお前の言ってた道で間違ってただろ! 次は俺に任せるっていったじゃねえか。勝手ばっかり言ってんな!」
気の知れた男二人旅なんてするもんじゃねえな。オカケンも俺も車内での会話に飽きていた。といって普段から夜更かししてたから眠くもない。だってまだ夜の11時だからな。景色は山ばかりで飽きてしまい、温泉宿を通り過ぎてしまった後の山道だったから続く景色は本当に山ばかり。外灯も少なくて本当に退
屈だった。
……そんな時だった。

