「孔明の魂が……蘇る。たくさんの人の命や災いのエネルギーを犠牲にして……」
 淳さんが青い顔でうわ言のように、何度もつぶやく。
「父はそれを危惧して文献を残した。校庭に孔明の死体が埋まっていて我々は常に注意をしなければならない事を。供養の気持ちを忘れてはならない事を……」
 島尾さんは苦々しく真実を語ってくれた。
「でも、効果はあったみたいですね。現に徹のようにそれを真実と思い、十分に警戒にあたった人もいたくらいだ。かなりの大人数が注意を払ったに違いない」
 能勢さんが島尾さんを見ながら労いの言葉をかける。
「ただ……それでも限界はあったようだ。今までかなり復活を伸ばしてきたが、いよいよ孔明の復活は近い。夜が明けるまでには決着が着くだろう。私は最後まで見届ける義務がある。君たちも力を貸してくれ、この長く悲しい歴史に終わりを告げるために」
 私たちはお互いを見合うと、ゆっくりと頷いた。
 誰一人、この場から逃げようという者はいなかった。
「具体的に、私たちは一体どうすればいいんでしょうか?」
 私は最大の疑問を投げかける。
「このまま怪談を続けていてくれ。私はもう少しやる事があるので失礼するが、君たちの今までの怪談で孔明の魂が目覚め始めた。これはピンチと同時に最大のチャンスでもある。孔明の魂を完全に封印し浄化する事ができれば、この新座学園にかけられた呪いも消えるはずだ。また後で合流しよう。くれぐれも気をつけてな」
「島尾さんも……」
 しっかりと頷くと、島尾さんは教室から出て行った。
 ……沈黙が教室を支配した。
「さあ、次の話を始めようか。俺たちにできるのは怪談を続ける事だけだ。今は島尾さんを信じて続けよう」
 能勢さんの言葉に紫乃さんが、徹さんが、大ちゃんさんが、斎条さんが……そして私も頷いた。
 時刻は3時半。夜明けは刻一刻と近づいている……。

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