「気を悪くせんでくれ能勢君。私も何も起こらなそうなら出てくるつもりはなかった。ただ……やはり事態は悪い方へと進んでいた。井上孔明の魂は新座学園で朽ちたはずが、長い月日とともに少しずつ復活しつつある。ここまで来たら君たちに彼の事で少しでも有益な情報を聞かせておこうと思ってね」
島尾さんは今までの時間、用務員さんから私たちについて聞いていたらしい。
「父から聞いた風変りな少年……井上孔明について話そう」
……。
井上孔明は比較的活発な少年だった。友達も多く、勉強やスポーツもそれなりに出来て、いわゆる模範的な生徒という評価だった。
私の父である島尾政道とは特に仲の良い友達で、休み時間などはよく野球の話なんかをして盛り上がっていたそうだ。
「なあ島尾、俺さ最近考えている事があるんだけど、笑わないで聞いてくれるか?」
ある日、いつもと何も変わらない休み時間の会話で孔明は父に次のような話をした。
「人間ってさ、死んだらどうなるのかな?」
それを聞いた父は、笑わないという約束をしていたものの、あまりに突拍子もない質問に噴き出した。
「あはははは、どうしたんだよ孔明、急に何おかしな事を言い出すんだよ」
「ひどいな、笑わないって約束したのに」
初めから笑われるのを予想していたようで、別に孔明は怒り出す事はしなかった。
「あはは、すまん。でもなんでそんな事聞くんだよ。俺たちまだまだ10代だぜ? 今からそんな先の話をしてどうするんだよ?」
父の言葉に孔明も苦笑いをしていたが、それでも目は笑っていなかった。
「マムシは毒があるから危ない。鶏の玉子は食べられる」
突然遠くを見るような口調で孔明が言った。
「……おい、いったいどうしたんだよ?」
父は心配して声をかけた。
「いや、だからさ。マムシも玉子も誰かが……大昔の誰かが実際に体験して、それで失敗や成功を後世に語り継いでいったから常識になったんだろう? でも、人間が死んだらどうなる? その後の世界はどうなる? そんなの誰も教えてくれないじゃないか」
孔明は淡々と父に語った。
島尾さんは今までの時間、用務員さんから私たちについて聞いていたらしい。
「父から聞いた風変りな少年……井上孔明について話そう」
……。
井上孔明は比較的活発な少年だった。友達も多く、勉強やスポーツもそれなりに出来て、いわゆる模範的な生徒という評価だった。
私の父である島尾政道とは特に仲の良い友達で、休み時間などはよく野球の話なんかをして盛り上がっていたそうだ。
「なあ島尾、俺さ最近考えている事があるんだけど、笑わないで聞いてくれるか?」
ある日、いつもと何も変わらない休み時間の会話で孔明は父に次のような話をした。
「人間ってさ、死んだらどうなるのかな?」
それを聞いた父は、笑わないという約束をしていたものの、あまりに突拍子もない質問に噴き出した。
「あはははは、どうしたんだよ孔明、急に何おかしな事を言い出すんだよ」
「ひどいな、笑わないって約束したのに」
初めから笑われるのを予想していたようで、別に孔明は怒り出す事はしなかった。
「あはは、すまん。でもなんでそんな事聞くんだよ。俺たちまだまだ10代だぜ? 今からそんな先の話をしてどうするんだよ?」
父の言葉に孔明も苦笑いをしていたが、それでも目は笑っていなかった。
「マムシは毒があるから危ない。鶏の玉子は食べられる」
突然遠くを見るような口調で孔明が言った。
「……おい、いったいどうしたんだよ?」
父は心配して声をかけた。
「いや、だからさ。マムシも玉子も誰かが……大昔の誰かが実際に体験して、それで失敗や成功を後世に語り継いでいったから常識になったんだろう? でも、人間が死んだらどうなる? その後の世界はどうなる? そんなの誰も教えてくれないじゃないか」
孔明は淡々と父に語った。

