学園怪談2 ~10年後の再会~

 ……。
 淳さんのあまりにも凄まじい話に私は声も出なかった。
「そして翌日、教室や校舎の至る所で喜多川も含めて怪談に参加した全ての生徒の無残な死体が発見されたんだ」
 その意外な結末に私はようやく喉を言葉が通った。
「喜多川さん……も?」
 百物語を自ら起こした事件で終結した本人が死んでいた?
「ああ。だってさ、なんで喜多川本人の体験を僕が知ってるか分かる?」
「あっ!」
 そういえばそうだ。喜多川さん本人が体験した事で、本人が死んでしまったなら淳さんは一体どうやってこの事実を知ったんだろうか?
「……あのね、後から聞いた話なんだけど……。警察や鑑識が入って事件を全て調べたところ、喜多川一人の死亡推定時刻が早いという事実が判明したんだ」
「……へ? それはどういう事ですか?」
 私は淳さんの言った事が理解できずに聞き返した。
 淳さんは、言葉を探すように一瞬宙を見た後、ゆっくりと話し始めた。
「つまりね、喜多川は殺されたみんなよりも先に死んでいたはずだったってこと。百物語が始まる前には怪談に参加してないクラスメイトたちも喜多川と話したという証言もあったんだけどさ、死亡推定時刻は百物語を行った日の……前日の夜なんだって。それと、その死亡したとされる時間なんだけど、喜多川の両親の証言があってね、彼は部屋で勉強をしていたらしくて、1冊のノートが発見されたんだ」
 私の頭はもう半分淳さんの言葉が届かなくなっていた。あまりに意外な展開、そしてあり得ない事実のせいで……。
「そのノートに、書かれていたんだよ。翌日に行われる予定の百物語の内容と、そして百話目の……事件がさ」
 私は泣いていた。そして、震えていた。百物語というものの持つ……恐ろしさに。もう戻ることのできない、踏み出してしまったという後悔の念に。
 でも……、私は同時に感じていた。複雑な感情の中に渦巻く、得体のしれない感覚……。リビドーにも似た、そんな抑えきれない欲求を。
「大丈夫、俺たちは誰も死んだりしない。彼らにだって本当は助かる道はあった筈だ。どこかに、本当にどこかに生きるためのヒントが隠されているはずなんだ。それを俺達で探し出すんだ」
 徹さんが前向きな発言をするが、それでも全員不安は隠せなかった。
怪談は本当に最後の一周に突入したのだ……。

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