第55話 『嘘八百』 語り手 斎条弘子

 次の話は斎条さんだ。すっかり大人な顔つきになったものの、身長だけは中学の時から全くと言っていいほど変わっていない。
「こんばんは。みなさん久しぶりですね~。元気にしてましたか?」
 相変わらず屈託の無い笑顔も健在だ。
「本当に久しぶりですよね。斎条さんは今は何をしてるんですか?」
 ……彼女は今、某有名大学の大学院生をやっているらしい。高校から海外留学をして、今では英語、フランス語、スペイン語など5ヶ国にも及ぶ外国語をマスターしたという。
「いや~、でもまあ、やっぱり日本が一番落ち着くね~。祖国は素晴らしいわ」
「こうしてまたみんなで集まれてよかったです。斎条さん。また怪談をお願いできますか?」
「ええ、もちろんです!」
斎条さんは私の言葉を待っていたかのように怪談を話し始めた。
「さて、嘘八百っていう言葉をしってますか? 嘘も八百回ついてしまったら次からはどんな簡単な嘘もつけないっていう事から、転じて根も葉もない事実……つまり嘘つきのことです」
 みんなが興味深げに聞いているのを確認すると、斎条さんは続けた。
「嘘つきは泥棒の始まりと言いますが、同じ嘘をつき続けて八百回たったら、801回目にはどんな嘘をつくのでしょうか? 私のお話を始めます」