どこかから聞こえる声、その中に何やらうめき声のようなものも混じっている気がした。それは低い唸り声のようなものだったり、高い金切り声のようなものだったり、赤子の泣き声のようなものも聞こえた気がした。まるで、戦時中のどこかの被災地の声をきいているような感じだ。
「なんてことだ。この新座学園が、そんなにあの世と近い場所だったなんて。俺たちが……俺たちが怪談を続けたせいで地場の霊力を上げてしまった。情念渦巻くこの地での怪談はタブーだったんだ! このままではあの世との境界線がなくなって、様々な悪霊が現世に来てしまう」
能勢さんが脂汗を掻きながら床に手をつく。
「でも、でで、でも。そんな本当にそんなことが……」
私は目の前の光景が理解できず、何も話すこともできず、同じ言葉を連呼する。あの世とこの世の境目がなくなることで、どんな弊害があるのか想像もつかなかった。
『……もう……終わりだ……このまま……生贄となるがいい……』
そして、井上孔明の情念は消えた。
もはや、彼がそこにいたのだという証拠は跡かたもなく消えていた。
……しばらく、誰も声を上げることができなかった。いったいどれだけの時間が過ぎていたのだろう。
「もしも~し、もしも~し!」
紫乃さんが携帯で喋る声で我に返った。
見ると、どうやら助けを求めるべく携帯を取り出した紫乃さんがどこかに電話をしていた。しかし、圏外にでもなってしまったのか、通話は叶わないようだ。
「まずいよ、やっぱ。なあ、みんなで逃げないか……このまま」
徹さんのなさけない声に私は頷きたかった。でも、それが叶わない願いである事も十分に承知していた。
なぜなら、先ほどからまた校庭を彷徨う女の霊が歩いているのが見えたからだ。一度は消えたはずの霊が再びはっきりと見えている。ということは、昇降口の幽霊たちも、この学園に潜む全ての霊が起きだしていることも想像がつく。
「無理だ。もう動き出した歯車は回り続ける」
淳さんの言葉に、誰も反論できない。
大ちゃんさんが、何か言おうとしたが、うまく説明できないのか、やはり黙って椅子に座ってしまった。
静けさが教室内を支配した。もうすぐ、とんでもない事が起こるかもしれない。でも何もできないでここにいる自分たちが歯がゆかった。
「なんてことだ。この新座学園が、そんなにあの世と近い場所だったなんて。俺たちが……俺たちが怪談を続けたせいで地場の霊力を上げてしまった。情念渦巻くこの地での怪談はタブーだったんだ! このままではあの世との境界線がなくなって、様々な悪霊が現世に来てしまう」
能勢さんが脂汗を掻きながら床に手をつく。
「でも、でで、でも。そんな本当にそんなことが……」
私は目の前の光景が理解できず、何も話すこともできず、同じ言葉を連呼する。あの世とこの世の境目がなくなることで、どんな弊害があるのか想像もつかなかった。
『……もう……終わりだ……このまま……生贄となるがいい……』
そして、井上孔明の情念は消えた。
もはや、彼がそこにいたのだという証拠は跡かたもなく消えていた。
……しばらく、誰も声を上げることができなかった。いったいどれだけの時間が過ぎていたのだろう。
「もしも~し、もしも~し!」
紫乃さんが携帯で喋る声で我に返った。
見ると、どうやら助けを求めるべく携帯を取り出した紫乃さんがどこかに電話をしていた。しかし、圏外にでもなってしまったのか、通話は叶わないようだ。
「まずいよ、やっぱ。なあ、みんなで逃げないか……このまま」
徹さんのなさけない声に私は頷きたかった。でも、それが叶わない願いである事も十分に承知していた。
なぜなら、先ほどからまた校庭を彷徨う女の霊が歩いているのが見えたからだ。一度は消えたはずの霊が再びはっきりと見えている。ということは、昇降口の幽霊たちも、この学園に潜む全ての霊が起きだしていることも想像がつく。
「無理だ。もう動き出した歯車は回り続ける」
淳さんの言葉に、誰も反論できない。
大ちゃんさんが、何か言おうとしたが、うまく説明できないのか、やはり黙って椅子に座ってしまった。
静けさが教室内を支配した。もうすぐ、とんでもない事が起こるかもしれない。でも何もできないでここにいる自分たちが歯がゆかった。

