……。
「嫁、姑の戦争っていうのはよく聞く話だけど、旦那が海外出張に出てからだから……2年間の間、あの蔵に旦那のお母さんは閉じ込められていたんだね」
能勢さんは蔵の中で、蔵とは対照的に頑丈な鎖に繋がれた老婆を発見したらしい。老婆は陽の光を見せられなかった為か目が見えず、最低限の食事……というか、エサだけを与えられ、排泄は部屋の隅に置かれた溢れんばかりの容器にしていたようである。
「奥さんは警察に捕まったんですよね」
「うん。僕もさすがに異常な事態だったから直ぐに警察に通報したよ。あの辺りは閑散としてるから、近所の人たちも全く異変に気づかなかったみたいでね」
事件は解決したはずなのに、話を終えた能勢さんの顔色はいま一つ冴えない。
「どうかしたんですか?」
心配になって私は聞いた。
「いや、警察に捕まった奥さんとルカちゃんの最後の姿が目に焼きついてしまってね。特にルカちゃんは僕に最後にこう言ったんだ」
『嘘つき! 嘘つきには『どんぐりさん』が来るよ!』
「その言葉がずっと僕の頭から離れないんだ。彼女の言っていた『どんぐりさん』って、本当に老婆のことだったんだろうかって」
……能勢さんの体験を想像すると、私の頭の中にも正体不明の『どんぐりさん』の咆哮が聞こえてくるような気がした……。
残り46話
「嫁、姑の戦争っていうのはよく聞く話だけど、旦那が海外出張に出てからだから……2年間の間、あの蔵に旦那のお母さんは閉じ込められていたんだね」
能勢さんは蔵の中で、蔵とは対照的に頑丈な鎖に繋がれた老婆を発見したらしい。老婆は陽の光を見せられなかった為か目が見えず、最低限の食事……というか、エサだけを与えられ、排泄は部屋の隅に置かれた溢れんばかりの容器にしていたようである。
「奥さんは警察に捕まったんですよね」
「うん。僕もさすがに異常な事態だったから直ぐに警察に通報したよ。あの辺りは閑散としてるから、近所の人たちも全く異変に気づかなかったみたいでね」
事件は解決したはずなのに、話を終えた能勢さんの顔色はいま一つ冴えない。
「どうかしたんですか?」
心配になって私は聞いた。
「いや、警察に捕まった奥さんとルカちゃんの最後の姿が目に焼きついてしまってね。特にルカちゃんは僕に最後にこう言ったんだ」
『嘘つき! 嘘つきには『どんぐりさん』が来るよ!』
「その言葉がずっと僕の頭から離れないんだ。彼女の言っていた『どんぐりさん』って、本当に老婆のことだったんだろうかって」
……能勢さんの体験を想像すると、私の頭の中にも正体不明の『どんぐりさん』の咆哮が聞こえてくるような気がした……。
残り46話

