……。
 パンツマンと水沢さんの漫才じみた怪談が終わった。
「そ、その女性ってもしかして?」
 私が恐る恐る聞くと。水沢さんはじっと私を見据えて言った。
「間違いない、あの卵の母親だよ。でも俺が見た限りでは明らかに人間じゃなかったね。おそらくは人間の姿を真似た鳥……ハーピィの一種じゃないかって思うんだ」
「ハーピィ?」
 聞きなれない単語に私は目が点になった。
「ギリシャ神話に出てくる人間と鳥の中間的な存在だよ。もちろん現実にそんな奴がいるとは思えないけど、敢えて形容するならそうなるかなって思う」
 徹さんが一歩前に出て質問した。
「それで、お前は襲われなかったのか? お前がハーピィの卵を割ったんだろう?」
「大丈夫だったよ。質問に対して俺は『何を言ってるのかわからない』という意味でとれる返事をしたからね。『割ったのは俺じゃない』とか言ったら卵の事について知ってる事になるから襲われてたろうね」
 私は少し頭が混乱してきたが、何にしても水沢さんの推理どおりなら怪物の卵が新座学園に産み付けられていた。それが孵化する前に水沢さんは破壊した。それなら何の問題もないのではないか? あ、でも卵を産んだ母親はどうなったんだろう?
「あの、水沢。じゃあ、母親はその後どうなったんだ? 犯人捜しにやっきになって誰かを襲ったりしたんじゃないのか?」
 淳さんが私に代って質問してくれた。