パ:はあ、でもあんさあ、そんな事して卵を産んだ親が悲しむんちゃいまっか?
水:そう、それで後日、俺は不思議な体験をしたんだ。
パ:ほうほう。
水:卵を割ってから1か月くらいくらい経ったある日の帰り道、家路を急いでいた俺の前
方で、立ち尽くしたままじっとこっちを見る女性がいた。
パ:ほう、恋する乙女、秋はセンチな季節ですからなあ。
水:だったら良かったんだけど、髪はバサバサ、服は皺だらけでギョロっとした両目だけ
が獲物をみるような感じで印象的な人だった。年齢は……わからない。若くも見える
し40代と言われても信じてしまいそうな風貌だったからね。
パ:それで、どうなりました?
水:俺はかかわり合いにならないよう道の隅に寄った。するとス~ッツとその女性も俺の
  事を追いかけるようにス~ッと同じだけ横に移動したんだ。
パ:そんなん、狭い日本じゃよくあることでっしゃろ?
水:違うんだって。目つきは変えず、俺をじっと見つめたまま移動してきたんだ。狭い道
  って訳でもないから十分すれ違える距離をとったつもりなのに、その女性はス~ッと
  風に乗るみたいにの俺の進路に立ちふさがったんだ。
パ:まさか通り魔?
水:その可能性を俺も考えたよ、もしかして頭のおかしい人が無差別通り魔をしてるんじ 
ゃないかってね。だから細心の注意を払ってさらに横に移動して走り抜けたんだ……。
すると。
パ:どうなった?
水:何事もなく通り抜けたと思った。ついてくる足音が聞こえない事を確認した俺は、か
なり離れたと思った頃に、そ~っと後ろを振り向いたよ。そこには……!
パ:そこには!
水:おれの顔数センチのところにギョロっとした目があったよ。例の女性は音もなく俺の
  すぐ後ろまで来ていたんだ。まるで宙を飛んだかのように。
パ:ひえ~~っ!
水:そして、俺を見て一言「私の卵……割ったのはあなたね?」
パ:割ってへん、割ってへん。ワイはなんも知らへんがな。
 パンツマンはまるで自分が質問を受けたかのようにジェスチャーする。
水:その時、俺はこう答えたよ。「え、何? いったい何を言ってるの?」……すると、そ
の女性はジロリともう一度俺を見たあと、ゆっくりと去って行った。