慌てて顔面を覆ったマスクは履いているのと殆ど同じブリーフだ。
「パ、パ、パパ、パンツマン！」
　私は驚きと興奮のあまり叫んでしまった。
「よう庄田、ひさしぶりだな」
　徹さんと淳さんがパンツマンに歩みより、握手を求めていた。
「な、何を言う。私は決して庄田なんて名前では……」
　明らかに動揺しているパンツマンだが、もう正体はバレバレのようである。
「さて、俺たちを呼び出したという事は、何かパンツマンのエピソードを聞かせてくれるのかな？」
　徹さんは並んだ椅子に腰掛け、ステージでポーズをとるパンツマンを見上げた。
「よし、じゃあ俺たちも座るとするか」
　それにならって能勢さんや大ちゃんさんも座りはじめたので、私たちも椅子に腰掛けた。
「まったく……放送を入れてから何をしてたんだ。油断してしまったじゃないか！」
　ぶつくさ文句を言うパンツマン。私たちが寄り道して遅くなったために予定が狂ったのだろう。少し申し訳ない気がしつつ、それでもパンツマンを見るとやはり笑いが込み上げてしまう。
「で、一体どんな話を聞かせてくれるんだ？」
　徹さんの言葉にパンツマンは待ったをかけた。
「まあ待て、実は私の他にもう一人ゲストがいる」
　そう言い放つと、音楽室の後ろのドア……音楽準備室から長身の男性が現れた。
「やあ、徹、淳、紫乃ちゃん久し振り」
　現れた人物の正体は、当時の２年生で、徹さんたちと同級生だったという水沢さんだった。
「お～、水沢！　久し振りだな！」
「本当！　卒業して以来だから……実に９年ぶりね」
　突然の再開に喜びあい、握手を交わす友たち。とても見ていて和やかな雰囲気だ。
「この水沢にも手伝ってもらって君たちに私たちの知っている怪談をプレゼントしたいと思う」
「よし、じゃあ始めようか庄田」
「私は庄田ではない」
　水沢さんは苦笑いしながら話し始めた。