……それから間もなくして。
「先生先生! 大変です。体育館で急に倒れた奴がいて白目剥いちゃったんです!」
 ……保険医の先生も大変ですね。普段とは違う部活尽くしの1日、それに炎天下ですから事故も増えて当然ですよね。
 体育館にたどり着くと、そこには2人の生徒が倒れていました。一人は熱中症。もう一人は激しく全身を痙攣させていた。
「ま、まずいわ! 誰かこの子の手足を押さえて! キミ、キミは彼の頭を押さえて……ほら、早く! 舌を飲まないように頭を横にして! 早く!」
 ……先ほどのサッカー部の生徒の騒ぎの比ではなかったようです。締め切った体育館内で極度の脱水症状、そのうえリバウンドの際のもつれで床に激しく激突した際の頭部への打ちどころがよくなかったようです。
 直ぐに救急車が呼ばれました。部長の生徒を一人と、保険医の先生も乗り込みました。
「なんで顧問の先生がいないのよ! もう、あなた達は家に帰って待機してなさい。後で部長から連絡をさせるから絶対に外出してはダメよ」
 後で聞いたことですが、顧問の先生は最初少し部活に顔を出しただけで、後は生徒に任せっきりで既に帰宅していたそうです。ひどい話ですね。
 ……とにかく、保険医の先生の素早い処置のおかげでバスケ部の生徒は事なきを得ました。最初かなり危ない状態だったそうですが、一種のショック症状だったため、落ち着いてしまえば大きな怪我には発展しないものだそうです。
 保険医の先生は大活躍でした。生徒の尊い命を救ったのですから……そう、一人だけは。