学園怪談2 ~10年後の再会~

第79話 『ミステリーツアー③』 語り手 斎条弘子

「あいたたた」
 階段から転げ落ちた斎条さんは足首を捻ったようだ。
「あら~、骨は折れてないみたいだけど……これは腫れてきちゃうわね。手当しないと」
 赤羽先生の簡易診断の結果、斎条さんには手当が必要との事で、保健室へと行くことになった。
「え~、もうすぐ音楽室なのに背を向けるのかよ」
「なら徹だけ中に入って待ってれば?」
 紫乃さんに冷たく言い放たれ、徹さんは仕方なく口をつぐんだ。
「すいません皆さん。私のせいで」
 斎条さんは大ちゃんさんに背負われ、一同は保健室を目指した。
 ……。
「ふう、これでよしっと」
 手早く斎条さんの手当てが済むと、保健室の冷蔵庫に冷やされていたジュースを全員で頂いて休憩をとった。
「あ!」
 突然、斎条さんが壁を指して小さな声を上げた。
「どうしたんですか?」
 一同が斎条さんが指さした壁を見つめた。
 そこにはベッドとベッドを隔てるついたてがあった。
「今、ついたての向こう側に人影が……」
 その言葉に一同が身構える中、徹さんがついたての後ろを覗き込む。
「……ん、大丈夫だよ。誰もいない」
 誰かの影が見えたという話だが、誰もいない。その言葉に私は少しばかり畏怖した。
「私……この保健室に起きた怖い話を思い出しました」
 斎条さんの不意の言葉に全員が聞き入った。
「私もこの学園で働いてるから噂くらいは聞いたことあるけど……詳しくは知らないわね。話してくれる?」
「はい」
 赤羽先生に促され、斎条さんは足に巻かれた包帯を撫でながら話し始めた。
「これは赤羽先生が赴任して来る少し前の事件です。私も友人から聞いた話なのですが……」