学園怪談2 ~10年後の再会~

カツン、カツン、カツン。

「え?」
 私は誰かの足音を階下に聞いた気がした。
 急に時の流れがスローモーションになった気がし、辺りの闇に強調され浮かび上がるように青白い光に包まれた人影が階下に見えた。
「あ、あわ、あわわわ」
 私は声が出なかった。みんなは音楽室へと歩き出してしまい、踊り場に現れた人影に気づく者は私以外にいない。
 カツン、カツン、カツン。
 ……人影は……斎条さんだ!
 私は後ろを振り返った。間違いなく斎条さんは音楽室に向かって歩いている。でも階下からは別の斎条さんが上って来る。
「……」
 私をジッと見つめる冷たい視線。その光のない眼は斎条さんであって斎条さんではなかった。明らかに死んだ……生きていないモノだ。
「うう、ううあ、あああ」
 金縛りだ。私は立ったまま、階下を見つめたまま金縛りになってしまった。かろうじて動くのは指先と瞼だけ。舌は麻痺して誰に助けを呼ぶこともできない。
 ラストクライマーは残りの階段を私に向って上がってくる。残り5段くらいになったところで両腕が前に突き出された。私の首に向かって絡みついてくる予感がした。
 ……このままじゃ、私は……。
 カツン、カツン、カツン、カツン……カツン。