学園怪談2 ~10年後の再会~

 私は自分でも気付かないうちに声が沈んでいた。
「あ、思い出した! 桜庭ね?」
 赤羽先生は驚いたように声を上げた。
 私はコクリとうなずくと、話を続けた。
「その桜庭さんなんですが……彼女は死んだんです……このエレベーターの中で……」
 ……みんなが息を飲むのがわかった。私自身あまりに凄惨な事件だったので記憶の底に封じ込めていた内容だ。
「……あのジメジメした梅雨を。あの最悪な出来事を私は一生忘れません」

 ……。
「こっちこっち。面白いものを発見したんだよ」
 桜庭さんはとても活発な同級生の女の子。小学校の時からいつも男の子に交じって遊んでいた女の子。ショートカットで日に焼けた健康的な肌は、制服のスカートがなければ男の子といってもわからない。そんな彼女が中学に入ってまだ間もない6月。
「どこに行くの? こっちは給食室しかないじゃん」
 彼の……おっとっと、彼女の案内するまま進むと、給食室横の運搬エレベーターの前にたどり着いた。
「このエレベーターさあ、電源が落とされているけど、実は電源ボックスのカギはいつも空いてるから……よっと」
 ガチャリ。ウィィィィィン。
 彼女が何か横で操作するとエレベーターの電源が入り、目の前のドアが開閉した。
「ほんとだ。でも勝手に使っちゃマズイよ」
 私はほとんど説得力の無い言葉を吐いた。
「へへ、これを使えば2階にも3階にも行けるじゃん? 階段を登らなくてすむから楽チンだよね」
 そう言うと、彼女は器用に身体を折り曲げながら中に入り始めた。
「ちょ、ちょっとやめなよ。危ないってば」
 私の制止の言葉を聞かずに彼女はエレベーターに収まった。
「じゃあ、ちょっくら3階まで行ってみるね」
 窮屈な姿勢のまま器用に『閉じる』ボタンを押すと、エレベーターの矢印が上に点灯して鈍い機械音と共にエレベーターが上がって行った。