学園怪談2 ~10年後の再会~

 ……。
「口裂け女っていうのはね、もともとはただの人間の女性なんだ。それが死ぬ間際に子供の事を心配たまま未練を残して死ぬと妖怪になるって言われている」
 能勢さんの言葉に私は質問を投げかけた。
「じゃあ、その妖怪は八田さんのお母さんが妖怪になって出たという訳ですか……でも一体なぜ七瀬さんを襲ったんですかね?」
 すると、能勢さんは苦笑いして言った。
「八田のお袋さんは息子を病的なまでに溺愛していてね。八田が子供の頃、彼に怪我をさせた同級生の男の子を包丁で脅かしたり、付きまとう女の子なんかは洋服を切り裂いたりしたらしいよ。大学卒業後、今の仕事についた頃、病気で亡くなってしまったらしいんだ。結局は死んでも八田につきまとう女性を、口裂け女という最も醜い姿をした妖怪になってまで遠ざけた。……自分自身が八田を不幸にしてるなんて夢にも思ってなかったんだろうね、でも彼女の思惑通り、七瀬はほのかに抱いていた八田への気持ちを諦めたんだ」
 能勢さんは首を振り振り、話を終えた。
「本当に怖いのは人間自身ということなんですかね……」
 私の母も結構過保護だ。もし未練を残したまま死んでしまったら、八田さんのお母さんのように妖怪化するのだろうか?
 
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