……そして、日にちが経つにつれ、更にキズは大きくなり、そのキズの位置も次第に上へ上へと向かっている。
 1週間と経たないうちにキズは指一本の大きさ、そしてその形はまるで尖った針のように先端に鋭さが出てきたように思えた。
「やだ、やだよ。キズが……心臓に向かってる!」
 そう、最初ふくらはぎ辺りにあった筈のキズは、次第に心臓へと向かっていた。まるで血液の流れに乗って心臓へと戻るかのように。このままでは心臓に突き刺さってしまうのではないかと思えた。
 ……意を決した祥子は大学病院に手術を願い出た。相変わらずレントゲンでは体の内部に異常は見られなかったが、体の表面のキズは確かに見た目も良くないという事で、病院側も納得した上での手術だった。
「よかった、私の体もこれで元に戻れる」
 手術後、経過を待って包帯をとって見ると、そこには奇麗な白い肌が広がっていた。まるで始めからキズなど無かったかのように。
 祥子はすっかり安心し、次の日に退院も決まって心地よい眠りについた。
 ……そして、その夜。
 ドクッ、ドクッ、ドクッ。
「はあ、はあ、はあ」
 妙な息苦しさ、そして胸の付近に熱を感じて祥子は飛び起きた。
「ひ、ひいいいいい!」
 祥子は慌ててパジャマを脱ぐと、そこに広がる自分の体を見て悲鳴を上げた。
 心臓が皮膚の下で激しく脈打っているのだ! それに手術で取り去ったはずの針のようなキズが再び復活していた。今まで以上に鋭く尖った大きな針が、今まさに祥子の心臓を串刺しにしようとしていたのだ。