学園怪談2 ~10年後の再会~

……。
 日本全国には怪談スポットが数多くある。どこの国にも怪談はあるらしいけど、日本は特に怪談が多い。まあ逆に言えばそれが多くの怪談スポットを作り出した訳でもある。
 ……。
「そんなに怖くなかったな。やっぱり幽霊なんていねえんだよ」
 敦の言葉に妹の祥子は弱弱しく頷いた。
「そうだね。お兄ちゃんの言うとおりだよ」
 この時、兄の敦は祥子の異変には気づかなかった。
 ……心霊スポットと名高い『うたた寝の森』に、つい先ほど仲間数名と赴き、何事もなく帰宅したばかりだった。
 妹の祥子は最後尾を歩いていたが、ヤブを抜ける際に何かの植物のトゲが足に刺さり、軽く血を流していた。
 ……ただそれだけ。そう、その時には確かにただそれだけの事だったのだ。
 ……次の日。
「なんか昨日刺さったトゲ、知らない間に抜けたみたい」
 昨夜、家に帰った後、祥子はトゲを抜こうと試みたものの、トゲは足の中に入り込んでしまったのか、直ぐには取れそうもなかった。今朝起きた時には足の傷も塞がり、トゲが刺さった跡など何もなくなっていた。痛みも消えて本当に昨夜の事は何もなかったと思えた程だった。
 ……しかし、その夜。
「ん、あれ?」
 祥子は風呂上りにベッドの上で自分の昨夜の傷の直ぐ上……ふくらはぎ辺りに、小さな、本当に小さなキズを見つけた。
「痛くないけど……、まさか、昨日のトゲじゃないよね?」
 そのキズというか膨らみは、小さいが確かに皮膚の下に見てとれた。
 祥子は痛みも感じず、大して目立たなかったので特に気にすることも無かった。しかし、このトゲの出現はまだほんの序章でしかなかった。
 ……次の日。
「な、何よこれ!」
 祥子は着替えの際、昨日見つけたキズが大きくなっているのに気づいた。昨夜見た時には小さな、本当に小さなキズで、よく見なければ気付かないほどだったのに対して、今朝のキズは明らかに昨夜のものよりも大きい。その大きさは小指の爪程の大きさになっていた。
「いけない、学校に遅刻しちゃう」
 祥子はキズを気にしつつも痛みがないことを理由に、急いで着替えて学校に向かった。