学園怪談2 ~10年後の再会~

第75話 『伝言板』 語り手 小野田紫乃

 ……。
 話もいよいよ中盤だ。この百物語も徐々に終わりへと確実に向かっている。
「では紫乃さんの番ですね」
 私の言葉に紫乃さんがうなずき、ゆっくりとした口調で物語が紡ぎ始められた。
「さ、それじゃあ始めるね」

 ……。
 この話は私が高校時代の時のお話。私が実際に体験したことだよ。
「紫乃~! ちょっと待ってよ~」
 学校の最寄り駅から私の学校までは徒歩10分。朝の忙しい時間には徒歩10分は煩わしい距離かもしれない。でも私には貴重な10分。なぜならこの子との毎日が私の日課だったからね。
「おはようマイ。今日は遅かったから先に行くって駅の伝言板にメッセージ書いたの見た?」
 この駅はあまり大きな駅じゃないんだ。改札も一つしかないし、朝の通勤ラッシュといっても急行電車も止まらない通過駅。だから利用客もそこまで多くないの。
駅の改札を出てすぐのところに伝言板があるんだけど、昨今の携帯の普及により利用する人もめっきり減ったから、けっこうスペースを広く使えるんだ。私たちの学校は携帯の使用どころか持ち込みも厳しく禁止されてたから、何か用がある度に頻繁に利用していたの。
「見たよ~。ごめんね遅くなって。走れば追いつくかと思ったから頑張ってきたよ」
 ……マイは高校で知り合った女の子。私は地元から少し離れた高校へと進学したため、この学校に中学高の同級生はほとんどいなかった。
 ドキドキして不安でたまらなかった入学式。そこで彼女に出会った。マイも私と同じように違う地域から進学してきた女の子。長いポニーテールが特徴の長身の女の子。笑顔が可愛くて無邪気、でもどこかおっとりした雰囲気を併せ持った女の子。
 私たちは席が隣同士で、似た境遇ということから直ぐに仲良しになった。そして毎日一緒に登下校した。毎日往復での20分間が私たちの最大の楽しみだった。
 ……。