学園怪談2 ~10年後の再会~

 ……。
 そして、奇跡。まさに奇跡としかいいようがないが、台風は急速に勢力を弱め、予想されていた飛行機の欠航はなくなり予定通りに拓海は北海道へ飛んだ。
「やっぱり、テルテル坊主は凄いよ!」
 研修を終えると、拓海は10個のテルテル坊主それぞれに甘酒を与えた。
 ……。
 さらに5年後。28歳になった拓海にもついに結婚時がやってきた。
 その頃には拓海の母は借金の返済を終え、今では拓海の稼ぎだけで親子二人が生活できるようになっていた。しかし、母は病弱になり最近ではほとんど寝たきりになっていた。
「……拓海。お前の結婚式、見たかったわ……」
 母は息子に弱気な口調で微笑んだ。
「何言ってるんだよ母さん。僕の結婚式をちゃんと見てよ、母さんが来てくれなかったら結婚式なんてしなくてもいい!」
「でもね、このとおり具合が悪くてね……、それにこの時期には膝や腰がギシギシと痛むんだよ家の中だけならともかく、外に行くことは辛いんだよ」
 母の言う事は少しも大袈裟ではなかった。実の所、拓海は母の担当医から聞かされていたのだ、彼女がそんなに長くはないことを……。母は働きすぎで身体を壊し、多忙と金欠を理由に病院に検査に行くこともしなかった。悪性の腫瘍が発見された時には既に時遅く転移があちこちに見つかり、本当はいつ死んでもおかしくないとの事だった。
 それでも母は入院しようとしなかった。少しでも息子のそばにいてやりたいと思っていた。それが拓海にも伝わり嬉しくて……辛かった。
「この雨さえやめば行けるかねえ」
 母は窓の向こうの景色を見つめた