……。
「地蔵が笑ったなんて微妙だな。だって元々地蔵っていうのは笑っているように見えるじゃん。そういう風に作られている訳でしょ?」
 徹さんが話しに水を差した。
「ええ、まあ徹さんの言うことも一理ありますよね。だいたい石で出来ているわけですから本当に笑うなんて有り得ないんですけどね、でも私は確かにお地蔵さまに助けてもらいましたし、実際にあの野火用水のお地蔵さまが笑うっていう話は有名みたいです」
 斎条さんは特に気分を害した様子も無く続けた。
「そうなんだ。でも新座にお化けが出るなんて怖いね」
 紫乃さんは身震いしながら言う。
「そうですね、新座はこの辺りでも特に邪気を引きつけてしまう土地柄のようです。でも地域のみんながあのお地蔵さまを大切にしているから、お地蔵さまは笑顔で私たちに降りかかる災厄を払ってくれているんです」
 斎条さんの話しに不思議な想いを感じつつ、私は普段何気に通り過ぎるお地蔵さまの事を思い出した。
「私も次にあのお地蔵さまの前を通る時には注意して見てみますね」
 嬉しさで笑うお地蔵さまなら見てみたいと、私は素直に思った。
「そうですね、お地蔵さまが笑いかけてくれるといいですね。……でも気をつけて下さいね、私を襲ったあの自転車のお化けも、いまだに妙林寺の近くに現れるみたいですから……」
 私は妙林寺へは絶対に昼間に行こうと決意した。

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