シャーーーーッ。
シャーーーーッ。
しかし、私がスピードを上げると、当然のように後ろのお化けもスピードを上げる。
「いやああ! こ、来ないで~!」
坂を下りきり、緩やかな上り坂が始まった。
キコキコキコキコ。
懸命に私はペダルをこぎ、とにかく引き離すことに全力を注いだ。追いつかれたら命は無い! なぜかそんな気がして足が震え、うまく力が入らない。
しかし、ここは上り坂だ。女の私の脚力では徐々にスピードは落ち、後ろから近づく自転車の気配はもうすぐそこまで近づいてきた。
「はあ、はあ、はあ。も、もう……だめ」
ガシャアアアン。
ついに私は足がもつれ、ペダルを踏み外して自転車もろとも転倒した。
キコキコキコ!
私の眼前まで、例のお化け自転車が迫ってきた。
「きゃああ! 誰か助けてえええ!」
私は転んで出来た傷の痛みを気にする事も無く、振り返って這いずった。
……すると、すぐ側に何かが見えた。
「あ、あれは!」
……そこに見えたのは赤い前掛けをかけたお地蔵さまだった。
「ウヒヒヒヒヒ!」
無言だったお化けが笑い出し、その顔が私に迫ってくる。
「もう嫌あああ!」
私が必死にお地蔵さまの方へと向かうと、お地蔵さまに信じられない変化が表れた。
「きゃああ! こ、こっちもだあ!」
なんと、石で出来たお地蔵さまの口が開き、お化けの男と同じような笑いを浮かべたではないか。
私は恐怖で顔を覆い隠し、その場にペタンと座り込んでうつ伏した。
「ギイヤアアア!」
その時、私の耳に先ほどのお化けの男の声が聞こえた。しかし、その声は私を追いかけた時の嬉しげな笑い声ではなく、断末魔の叫び声だった。
……そして静寂が辺りを支配し、私の周りからお化けの気配が消えた。
「わ、私は……た、助かったの?」
私は道路に膝を着き、目の前の光景に目を奪われた。
「お地蔵さまが……笑ってる」
私の前にいるお地蔵さまは、先ほどの薄気味悪い笑いとはうって変わった、優しい穏やかな笑みを浮かべていた。
先ほどまで私を追い回したお化けは自転車もろとも消えていた。
「あ、ありがとう……」
私は自然と言葉が洩れた。
そして、その言葉を聞き届けたかのように、お地蔵さまの笑顔は消え、いつの間にか元との姿に戻っていた……。
シャーーーーッ。
しかし、私がスピードを上げると、当然のように後ろのお化けもスピードを上げる。
「いやああ! こ、来ないで~!」
坂を下りきり、緩やかな上り坂が始まった。
キコキコキコキコ。
懸命に私はペダルをこぎ、とにかく引き離すことに全力を注いだ。追いつかれたら命は無い! なぜかそんな気がして足が震え、うまく力が入らない。
しかし、ここは上り坂だ。女の私の脚力では徐々にスピードは落ち、後ろから近づく自転車の気配はもうすぐそこまで近づいてきた。
「はあ、はあ、はあ。も、もう……だめ」
ガシャアアアン。
ついに私は足がもつれ、ペダルを踏み外して自転車もろとも転倒した。
キコキコキコ!
私の眼前まで、例のお化け自転車が迫ってきた。
「きゃああ! 誰か助けてえええ!」
私は転んで出来た傷の痛みを気にする事も無く、振り返って這いずった。
……すると、すぐ側に何かが見えた。
「あ、あれは!」
……そこに見えたのは赤い前掛けをかけたお地蔵さまだった。
「ウヒヒヒヒヒ!」
無言だったお化けが笑い出し、その顔が私に迫ってくる。
「もう嫌あああ!」
私が必死にお地蔵さまの方へと向かうと、お地蔵さまに信じられない変化が表れた。
「きゃああ! こ、こっちもだあ!」
なんと、石で出来たお地蔵さまの口が開き、お化けの男と同じような笑いを浮かべたではないか。
私は恐怖で顔を覆い隠し、その場にペタンと座り込んでうつ伏した。
「ギイヤアアア!」
その時、私の耳に先ほどのお化けの男の声が聞こえた。しかし、その声は私を追いかけた時の嬉しげな笑い声ではなく、断末魔の叫び声だった。
……そして静寂が辺りを支配し、私の周りからお化けの気配が消えた。
「わ、私は……た、助かったの?」
私は道路に膝を着き、目の前の光景に目を奪われた。
「お地蔵さまが……笑ってる」
私の前にいるお地蔵さまは、先ほどの薄気味悪い笑いとはうって変わった、優しい穏やかな笑みを浮かべていた。
先ほどまで私を追い回したお化けは自転車もろとも消えていた。
「あ、ありがとう……」
私は自然と言葉が洩れた。
そして、その言葉を聞き届けたかのように、お地蔵さまの笑顔は消え、いつの間にか元との姿に戻っていた……。

