キー……コ、キー……コ。
私は後ろから近づいて来る自転車を先に行かせてあげようとスピードを落とした。
キー……コ、キー……コ。
……すると、後ろの自転車も同じようにスピードを落としたようだ。
キーコ、キーコ。
キーコ、キーコ。
私の少し後ろをくっついて来る自転車の主は、私と同じ速度で着かず離れずの距離を保っている。
「なんだよもう、抜かないなら引き離しちゃうからね」
私は下り坂になったのを利用して一気にスピードを上げる。少し長いこの坂を下ったら後は緩やかな上りだ。
しかし、後ろの自転車も同じようにスピードを上げ、私の後ろを同じ間隔でついてくる。いや、少しずつだがその距離は迫ってきているように感じた。
「何なのよ、もう」
実は私は少し怖くなっていた。この辺りは外灯がほとんど無いのでたまに変質者が出たり、無灯火の自転車や歩行者が車に撥ねられたりと、何かと物騒な場所だったからだ。
下り坂の途中、こがなくてもスピードが上がるので少し余裕が出来た私は後ろを振り返った。
「……な、なによ! あれ!」
ミラーには想像を絶するものが映っていた。
……自転車のハンドルとそれと人の顔。それだけだ。
私は驚いて思わず後ろを振り返って直に確認した。
私と形はそうは違わない自転車。だが、乗っている人……いや、乗っていると言えるかどうかも形容しがたい状態だが、明らかに有り得ない姿だった。ハンドルを握る両手、そしてニターッと薄気味悪い表情の中年の男の顔……それしかない。暗闇で見えないという訳ではない。本当にそれ以外の身体がないのだ。自転車のペダルは足でこいでいる訳でもないのに回ってタイヤを進めている。男は不気味な表情を崩さず、どこか楽しそうな表情で私を追いかけてくる。
「きゃああああ! お、お化けが出たああああ!」
私は大声で叫びながら全力疾走で坂道を下った。
私は後ろから近づいて来る自転車を先に行かせてあげようとスピードを落とした。
キー……コ、キー……コ。
……すると、後ろの自転車も同じようにスピードを落としたようだ。
キーコ、キーコ。
キーコ、キーコ。
私の少し後ろをくっついて来る自転車の主は、私と同じ速度で着かず離れずの距離を保っている。
「なんだよもう、抜かないなら引き離しちゃうからね」
私は下り坂になったのを利用して一気にスピードを上げる。少し長いこの坂を下ったら後は緩やかな上りだ。
しかし、後ろの自転車も同じようにスピードを上げ、私の後ろを同じ間隔でついてくる。いや、少しずつだがその距離は迫ってきているように感じた。
「何なのよ、もう」
実は私は少し怖くなっていた。この辺りは外灯がほとんど無いのでたまに変質者が出たり、無灯火の自転車や歩行者が車に撥ねられたりと、何かと物騒な場所だったからだ。
下り坂の途中、こがなくてもスピードが上がるので少し余裕が出来た私は後ろを振り返った。
「……な、なによ! あれ!」
ミラーには想像を絶するものが映っていた。
……自転車のハンドルとそれと人の顔。それだけだ。
私は驚いて思わず後ろを振り返って直に確認した。
私と形はそうは違わない自転車。だが、乗っている人……いや、乗っていると言えるかどうかも形容しがたい状態だが、明らかに有り得ない姿だった。ハンドルを握る両手、そしてニターッと薄気味悪い表情の中年の男の顔……それしかない。暗闇で見えないという訳ではない。本当にそれ以外の身体がないのだ。自転車のペダルは足でこいでいる訳でもないのに回ってタイヤを進めている。男は不気味な表情を崩さず、どこか楽しそうな表情で私を追いかけてくる。
「きゃああああ! お、お化けが出たああああ!」
私は大声で叫びながら全力疾走で坂道を下った。

