「はい小松。お、どうした、何! 事件か! よし、すぐに行く、久々の食いぶちだ、マッサージでもして待たせておけ、絶対に逃がすなよ!」
 小松っちゃんは携帯を切ると、教室を出ようとした。
「ごめんね。僕はもう行くけど、そうそう。怪談を続けるみんなに僕からの忠告だ。とにかく井上昂明の呪いが消えたと言っても新座学園で死んだ生徒達の浮かばれない魂は未だに彷徨い続けてる。もし何か異常や超常現象が起きたら悪い事は言わない、すぐにこの場を離れるんだ。そうでないと……」
 黙る小松っちゃんの次の言葉を全員が待つ。
「だめだ、僕にも予想がつかない。とにかく……想像を絶する恐ろしい事が起きる。それだけは言える。とにかく……気をつけて」
 小松っちゃんは慌しくペタペタという足音を残して去っていった。
「なんか忙しそうだね」
「まあ商売繁盛という事でよかったんじゃないの?」
 紫乃さんと赤羽先生が呑気にお喋りを続ける中、能勢さんと淳さんは小松っちゃんの話の後も険しい表情を崩さなかった。
「何も……起こらないですよね」
 私は誰にともなく呟いたが、返事をしてくれる者はなかった。

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