……。
「その後、柳田は練習中に事故が重なり、大怪我をして野球ができない身体になってしまった。そのために高校3年の大会には一試合も参加出来なかったそうなんだ」
「へ~、いったいどうしたんでしょうかね。それに例の煙の正体は?」
 大ちゃんさんは考え考え話した。
「これは俺の想像でしかないんだけど、柳田は敵のチームと通じてたんじゃないだろうか? 後でVTRとかで確認したんだけど、柳田は俺のヒットの際にわざと送れてホームに突っ込んだように見えるんだ。ホームベースをタッチ出来ずにアウトになったのもタイミングから考えれば不自然だしね」
 大ちゃんさんはちょっと興奮してきたのか、熱く説明を続ける。
「そこにあの控え室での電話……まあ真相はわからないけど、何か不正があったように思えてならないんだ。そしてその不正を許せなかった霊たち……甲子園の魔物たちが彼にキバを向いたのさ」
 かなりこじ付けっぽい話ではあるが、神聖なグラウンドで八百長を働いたのなら、スポーツマンにとって許される事ではない。ましてやたった一球が明暗を分ける舞台だ。何万人、何十万人もの野球好きが短い期間で訪れる聖地に潜む魔物……その招待は私たちの心に潜む情念の塊なのかもしれない……。
「ありがとうございました。やっぱり大ちゃんさんのスポーツ話は聞いていて気持ちがいいですね」
 照れたような顔をする大ちゃんさんに礼を言うと、私は次の話を聞く事にした。

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