イツワリノ恋人

だが、こうも注目が集まるとやりにくい。
2人だけなら、蹴りでも食らわせるところなんだが…。

「詳しくは後で」

…こいつも、少しやりにくかったようだ。
このあともこの男に会うのは気が進まないが、この場で何を言っても「後で」と言って逃げるに違いない。

「…わかった」

その答えに満足げに頷くと、嫌味な笑顔を浮かべながら「じゃあね」といって教室から出て行った。

あの嫌味な笑顔をつぶしてやりたい!
嗚呼、「後で」なんて来なければいい!

その後、私は絢加と周囲の女子からの質問攻めから逃げ回る羽目になる。
周囲の敵意がこもった視線を感じながら。

神崎瑠衣は、そんな彼女を眺めながら。

「後で」はやってきた。



「おい、」
「…」
「ちょっと、」
「……」
「…何か言え!」

って言うか、どこ行くんだ!?

「行こうか」と言って強引に手を引っ張られて歩き始めてかれこれ十分。
何を言っても反応が返ってくる事は無い。

「…着いたよ」
「これ…お前の家か?」
「うん、GAME会場でもある」
「は?」

どういうことだ?

「まあ、中に入ってよ。詳しく説明するからさ」
「…うん」

着いたのは、まさに中世ヨーロッパのお屋敷と呼ぶにふさわしい家だった。