「やめておけばよかったんだ」
『…うん』
「もう、彼で終わりにしておけばよかったんだ」

苦しくて、苦しくて。
もう、耐えられなくなった私は、絢加に電話をした。
絢加なら、全部知ってて、わかってくれる。
その甘さに、甘えた。

「オヒメサマの一人として見られているだけってわかってるのに…」
『…麗は、どうしたいの?』

どうしたい?
…そうか。
私は、だれかにこう言ってもらいたかっただけなんだ。

「傍にいたい…居てほしい…っ」

この数ヶ月で垣間見た彼の暗い表情。
笑っていてもらえるなら、笑っていて欲しい。
何かできるのなら、何かしてあげたい。
そんなの、驕りだって言うのはわかっている。

それに、告白したら。
もう、話すこともできなくなる。
いやだ。
触れたい、触れて欲しい。
そばにいたい、いて欲しい。

でも。
どんなに祈ったって。
どんなに願ったって。
心はその人だけのもの。
手に入れられない。

「でも、私は穢れてる」
『、麗!』

穢れ、なんていうと絢加は嫌がる。
でも、事実なんだ。
あの事件で、私の体は堕とされた。作り替えられてしまっている。

「誰も、愛したいなんて思うわけが…」
『バカ麗!』

悲鳴に近い絢加の声が聞こえ、耳から電話を離す。

次の瞬間、切れてしまっていた。

「…ごめん」