イツワリノ恋人

発見された麗は、一糸まとわぬ姿でベッドに横たわっていた。
女性の刑事さんが、麗を救出した。

『…ぅ…き』

よく聞き取れなかったけど、麗は彼氏の名前をうわごとのようにつぶやき続けていた。



主犯である写真部顧問も、その他関わっていた男たちも逮捕された。
顧問は懲戒免職、あとは裁判で判決を待つのみだ。

それよりも、大変なのは麗の方だった。

まだ暴行を受けたときの怪我が治っていないにもかかわらず登校してきたのには驚いた。
誰も寄せ付けない空気をまとい、私以外とは話そうとしない。その私にも、常に警戒を怠らなかった。
私に理由を伏せたまま彼氏と別れた。一体、何があったのか。
麗はもちろん、答えるわけがないので適当にはぐらかされたが。




「だからさ、私は麗がしあわせになってくれればいいわけ。…聞いてる?瑠衣」

そんな過去の出来事は伏せて、私はオヒメサマ候補に麗をあげた。

「男嫌いのオヒメサマ…うん、落としがいありそうじゃん?」
「真面目に話してるの」

いまいち、信用できないのが本音だ。
でも、この男は守ると決めた人間は守りぬく。

…絶対に。

「もし、麗が泣くようなことがあったら本気でシメるからね」
「……なあ、なんでおまえ友達のためにそんな頑張るんだよ?」
「麗を傷つけるやつは、この白崎絢加が許さない。それだけだけど?」

一瞬見開いた瞳が細められる。

「…わかった。お前がそこまで言うなら間違いないな」

笑った瑠衣の顔は、悔しいくらいにカッコよかった。