イツワリノ恋人

ピンポーン、ピンポーン…。

先生の自宅に来ると、出張であるはずの先生が出てきた。

『こんにちは、先生』
『いえ、どうしたんです?』
『忘れ物、届けに来たんですよ』
学校に私物を持ち込んじゃいけませんよ?

ニッコリと笑って、アルバムを差し出した。
先生の表情は、変わらなかった。

『…教師の机を、漁るものではありませんよ。それにしても、よく見つけましたね。鍵もかかっていたでしょう?』
『細工が陳腐過ぎたんですよ。私じゃなくても、多分見抜きました。まあ、先生を敬っていた部員たちは、そんなこと思いもしなかったでしょう』


「これ、私たちの学校の写真部顧問んが撮ったものです」

異質であることは、誰の目にも明らかだった。
隠撮であることに加え、麗以外の人間は、真っ黒に塗りつぶされていたのだから。

「今すぐ向かってください。私が案内します」
「しかし、礼状も何もなしに…」

渋る部下らしき刑事に、カッと怒りが湧き上がる。

「明らかに怪しい人間を調べないでどうするの!?今だって、麗がどんな目に遭ってるか、」
「おい、女で手が空いてる奴を集めろ。すぐに向かうぞ。一気にカタがつきそうだ」

少々堅物に見える刑事の言葉に少し驚いたが、私が話をして、先生がボロを出した時のみ捜査に入るということで了承してくれた。



ガッと、胸倉を掴まれる。

『邪魔だったんですよねぇ。私は彼女だけを見ていたいのに、異物まで目に入ってしまう。だから、気がついたんですよ、』
閉じ込めてしまえばいいんだって。

私は、あくまで自分が優位だという姿勢を崩さない先生に問いかけた。

『私に自白しちゃって、いいんですか?』
『ええ、今からあなたもどこかに閉じ込めてしまいますから、構いません』

私の首めがけて振り下ろされた手は届かない。部下の刑事が、既のところで手を受け止めたからだ。

『警察です。少々、家の中を調べさせていただいてもよろしいでしょうか?』