イツワリノ恋人

『え~、じゃあ諦めなよ』


私は無言で髪をとめていたピンを引き抜いた。
美佳の制止も聞かず、鍵穴に突っ込んだ。

『絢加、ほんとにやめなよ!』
『美佳、ああゆう真面目そうな先生こそ、陰で何してるかわからないんだよ?ここに卑猥な雑誌とか入ってたりするんじゃないの?』

私の言葉に、写真部の男子が反応した。

『おい、ちょっとくらいいいだろ?』
『俺らにも中身見せてくれよ~』

…男子って、不潔。
って言うなあ、麗なら。
と思っていると、手応えがあった。

『開いた』

ぼそりと呟くと、私を押しのけて男子達が引き出しの周りに群がった。
そこから落胆の声が響く。
中身は、先生が自分で撮った写真をまとめたアルバムばかりだったらしい。

でも、なにか引っかかる。
違和感の正体はすぐにわかった。
引き出しの深さだ。
10cmにも満たない誤差だけど、底がないはずの場所に底があった。
わずかな隙間を見つけて、ピンを押し込む。
本当に、ちょっとしたいたずらの筈だった。

少々手こずったが、板は外れた。
先生が何を入れていたか、ワクワクしながら覗いてみる。

…本当に、心臓が止まったかと思った。

麗の居場所が、わかった気がした。


『おい、そこ閉めとけよ~』

最早、興味をなくしてしまった部員たちはこの証拠品と呼べるアルバムを見てはいないようだ。

『…閉めなくても大丈夫だよ』

先生は、ここに来られない。
多分、二度と。