* * * * * * * * * *
3年前
『麗ちゃん、思い出したくない、忘れ去りたいって言うあなたの気持ちは良くわかるわ』
病院のベッドの上。
雨が降る窓の外を見つめ続ける私に女性の刑事さんが問いかける。
『だけど、貴女につらい思いをさせた犯人に厳しい処罰を下すためにも、貴女の証言が必要になってくるの』
私は答えない。
『一週間、どんな状況の中にいて、どんな被害を受けたのか。話しにくいかもしれないけど…』
面倒くさい。
『少しずつでいいから、ゆっくり私に…』
…もう、どうだっていいじゃないか。
もう全部、
もうぜんぶ
おわったことなんだから。
怪我だってたいしたことない。
こんなのすぐ治る。
そうだ、あんなの…。
たいしたことじゃない。
『明日からだったよな』
3年前、私には高校生の彼氏がいた。
彼はずば抜けて優秀で、夏休みの一ヶ月を使って短期留学にいくことになっていた。
『いつ頃こっちに帰ってくる?』
『8月の末くらい…ですかね』
『そうか、一ヶ月…』
一ヶ月も会えないのか…。
少しうなだれた私の頭を、彼はなでてくれた。
『一ヶ月なんかあっという間ですよ。そんな寂しそうな顔なさらないで』
『な…っ!勘違いするな、別に寂しがってなんかない!』
顔は絶対真っ赤で、説得力なんかこれっぽちもないだろう。
でも、嬉しそうな彼を見ているうちに、もっと寂しくなってきた。
3年前
『麗ちゃん、思い出したくない、忘れ去りたいって言うあなたの気持ちは良くわかるわ』
病院のベッドの上。
雨が降る窓の外を見つめ続ける私に女性の刑事さんが問いかける。
『だけど、貴女につらい思いをさせた犯人に厳しい処罰を下すためにも、貴女の証言が必要になってくるの』
私は答えない。
『一週間、どんな状況の中にいて、どんな被害を受けたのか。話しにくいかもしれないけど…』
面倒くさい。
『少しずつでいいから、ゆっくり私に…』
…もう、どうだっていいじゃないか。
もう全部、
もうぜんぶ
おわったことなんだから。
怪我だってたいしたことない。
こんなのすぐ治る。
そうだ、あんなの…。
たいしたことじゃない。
『明日からだったよな』
3年前、私には高校生の彼氏がいた。
彼はずば抜けて優秀で、夏休みの一ヶ月を使って短期留学にいくことになっていた。
『いつ頃こっちに帰ってくる?』
『8月の末くらい…ですかね』
『そうか、一ヶ月…』
一ヶ月も会えないのか…。
少しうなだれた私の頭を、彼はなでてくれた。
『一ヶ月なんかあっという間ですよ。そんな寂しそうな顔なさらないで』
『な…っ!勘違いするな、別に寂しがってなんかない!』
顔は絶対真っ赤で、説得力なんかこれっぽちもないだろう。
でも、嬉しそうな彼を見ているうちに、もっと寂しくなってきた。